それから数日間、スタートページだけを見て喜んでいた二人だったが、おじいさんがゲートボールに出かけているときおばあさんが何かに気付いた。
おばあさん「おやぁ、よく見ると矢印を絵や白い四角の上にのせると矢印でなくなるんじゃのう。これはきっと何かあるのじゃな」
好奇心の強いおばあさんは、画面を適当にクリックしてみた。
おばあさん「なんということでしょう! 画面が変わったではありませんか」
パソコンを導入してからすでに一週間が経とうとしていたこの日、ついにおばあさんはネットの世界の広さを知ることになったのである。
おばあさんは次に、カーソルの形がビームへと変化する場所、すなわちテキストボックスに興味を示した。
おばあさん「うーむ、これは何を意味するんじゃろか」
しばらく悩んでいたおばあさんであったが、おもむろにキーボードを叩き出した。
おばあさん「やはり、そうだったんじゃ。この白い四角は文字を書く場所じゃね」
自力でテキストボックスの意味を突き止めたおばあさん。なかなかの実力者である。
しかしそれだけでは何の意味も成さない。……と、おばあさんは意図せずEnterを押してしまった。
おばあさん「おや! 文字を入れてからこの大きいボタンを押すと画面が変わるのね」
またも新事実を発見したおばあさん。しかしキーボードのひらがなを見て叩いたので、意味のない語句を検索してしまっている。
おばあさん「むう、ボタンの文字通りに書くにはどうしたらいいのかの……そうじゃ!」
おばあさんはマニュアルの存在に気付いた。そしてかな入力の方法を知ったのである。
マニュアルにより、かな入力を習得したおばあさんは好きなテレビアイドルの名前をテキストボックスに入れてみた。
『にしくん』
ずらりと並ぶ西君(アイドル)関係のサイト。おばあさんはその一つをクリックしてみた。
おばあさん「こ、これは!」
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そこには、びっしりと西君の一挙手一投足が書かれたファンサイトが映し出されたのである!
おばあさん「なんと素晴らしいのかしら!」
おばあさんは大喜びでファンサイトにのめり込んだ。
その晩、おばあさんはおじいさんに興奮気味に検索ボックスの使い方を教えた。
もちろん、西君を検索したなどとは言わない。
おばあさん「この白いところに文字を入れて大きいボタンを押すとね、色々な絵や文章が見られるんですよ」
おじいさん「なんじゃと!? インターネットには、そんな使い方もあったのか!」
おじいさんは大いに驚いた。
そして、ネットの力を知ったおじいさんの中に、ある考えが浮かんだのである。